百合日記

体験談なのか、創作なのか…想像におまかせ…

朝の蝉《1》~百合日記④~

蝉の鳴き声で目が覚めた。
昨夜まで降り続いた雨は止み、朝の日差しが眩しい。
あのまま泊まっていったえんちゃんは、まだ寝息をたてている。2人でシングルベッドはやっぱり狭かった。ちょっと体が痛い。
普段より早く目が覚めてしまったのは、たぶん、あの蝉の鳴き声のせい。今日はやけにうるさく聞こえる。
昨夜、えんちゃんに幸のことを話したせいか、夢をみたような気がする。
8月ももう終わりに近い。あれから3年がたち、二十歳の夏が過ぎようとしている。3年。長かったのか、短かったのか。
暑いのも蝉がうるさいのも嫌い。夏は苦手だ。でも、懐かしい思い出もたくさん詰まっている。例えば、会いたい人。
そう、私はやっぱり幸に会いたいんだと思う。あまり考えないようにしていたけれど。
今も好き、なんて思いたくなかった。彼女とは終わったんだから。でも、彼女と過ごしたあの夏は、私のとても幸せな日々だった。
幸、サチ、さち。ずっとあの時間が続けばいいと思っていた。相手よりも、自分のための恋。
今でも不思議に思う。何故、あんなに苦しかったのに幸せだったのか。あの不思議な、キラキラした日々は何だったのか。
彼女は私に好きだと言ったし、私もそう言った。お互いだけだと、そう思った。
でも、今は私も知っている。
千のキスをかわそうと、万の誓いをかわそうと、愛は時にとても脆いのだと。あるいは幸は、あの頃から知っていたのかもしれない。
私は幾度も傷ついて、そして泣くことしかできない子どもだった。
             続きます(・∀・)